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BOOK PROJECTの全参加作家、および作品と応答の組み合わせを発表!

10/16 Fri

BOOK PROJECT「そのうち届くラブレター〜わかりあうことの不可能さと、あきらめないことについての考察〜」の全参加作家、および作品と応答する表現の組み合わせを発表いたしました。

BOOK PROJECTでは、6名の作家が作る「作品」に対して、8名1組が作品を見て感じたインスピレーションをもとに、各々の表現で応答します。この記事ではその全ラインナップを発表いたします。

 


 

01. 作家:山本高之(現代美術家) /作品 《悪夢の続き》(新作)

2人1組で一方が見た悪夢の話をもう一方が聴いて、続きを考える。横浜市栄区の特定非営利活動法人みちくさみち 地域活動支援センターegaoに協力してもらい撮影。

「僕の作品は基本的に、コミュニケーションにおける不可能性、他人のことは絶対理解できないよねというある種の絶望からはじまり、その先を想像するところから始まるものが多いです。……このプロジェクトは夢というプライベートな経験を、敢えてその言葉を使って他者に伝え、聞いた相手もまたその言葉を使って続きを考えハッピーエンドにしてしまいます。分かり合えなさを共に体験しつつ、かつ言葉を使っていてもそれを超えたところでの関係性は生まれるのかなと思いやってみることにしました。」(作家インタビューより) 

応答するひと:
●松本美枝子(写真家・美術家)/作品《いつか 私も みたいもの》(新作)
松本さんは、周囲のさまざまな関係性の人々に「私(作家本人)に見せたいと思う風景」を聞きました。見つかるかどうかわからないそれらを探しに行くことで、他者の心の内にあるイメージを想像し、写真に収めることはできるのかどうか、を試みました。

●中川美枝子(「視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ」スタッフ) /作品《蓋の向こうからあなたへ》(新作)
山本さんの作品を下敷きに、発話する人間の自意識のありかを考察したテキストを発表。「誰かのカメラが、私の蓋をずっと映しているとします。カメラの向こう側には、いろんな目と耳があるわけです。ひょっとしたら、私の蓋が私自身だと思われるかもしれないし、とっくに蓋の向こう側を見透かされているかもしれない。蓋の向こう側の私について、勝手な想像されているということもあり得ます。それでも私はきっと、蓋を完全にあけ放つことはしないでしょう。だって、素のままの自分を自分の中にとどめておきたいから。常に、求められている自分でいたいから。」(中川美枝子《蓋の向こうからあなたへ》より)

 

02. 作家:鎌江一美(やまなみ工房)/作品《タキシードを着たまさとさん》

思いを寄せる、やまなみ工房の施設長、山下完和(まさと)さんの像を粘土で作り続ける鎌江さん。ブックには所属するやまなみ工房での様子と制作シーンの撮り下ろしも収録されます。

応答するひと:
●柏木麻里(詩人)/作品《いつも、いつでも》(新作)
鎌江さんの創作に詩で応答してくれたのが、柏木麻里さん。人を想う気持ちの強さと、同時に経験する切なさが表現されています。「わたしが/さわっているのは/幸せになりかた/ねえ/今日一緒にいることは/明日一緒にいなくて良いってことじゃないんだよ/わかるよね」(柏木麻里「いつも、いつでも/坤」冒頭より)

 

03. 作家:井口直人(さふらん生活園)/作品《無題》

施設や、行きつけのコンビニのコピー機で、毎日決まった時間に行われる創作活動。スキャン台の上に顔や手、身の回りのものを置いて、時にスキャナーの動きに合わせて体を動かしながらコピーボタンを押します。色は施設の職員の方とのコミュニケーションを経て選ばれます。

応答するひと
●船越雅代(料理家・アーティスト) /作品 《痕跡》(新作)
実際にさふらん生活園へと足を運び、井口さんの制作の様子を目の当たりにした船越さん。井口さんの作品への応答として、色とりどりの野菜を薄くスライスして重ねた料理を作ってくれました。


●金氏徹平(現代美術家) /作品 《白地図》シリーズ
金氏さんは、20年近く継続して発表している《白地図》シリーズで井口さんの作品に応答します。「コピー機の光、石膏の粉の降雪、それぞれが個人的な小さなアクションとしての人工的な自然現象ともいえるようなものを用いて新しいイメージを作り出し、大きな流れとしての身体性、時間、価値観などを揺さぶる可能性があるのではないか?その点において共通点はないだろうかと考えてみたりしています。」(金氏徹平のテキストより)

 

04.作家:川戸由紀(アートかれん)/作品《無題(舞台シリーズ)》ほか

子ども向け番組のショーをモチーフに、登場するキャラクターや舞台の様子を、一場面ずつ連続して描き出す川戸由紀さん。一つの番組が大量の絵画の山となって表現されます。

応答するひと:
●横山裕一(美術家・漫画家)/作品《ベビーブーム「花火」》(新作)
一場面ずつの絵画を描く川戸さんへの応答として、横山さんは《ベビーブーム》の新作を制作しました。花火を楽しむ二人の様子が、刻々と流れる時間を表す漫画のコマの中に表されています。

05.リ・ビンユアン(現代美術家)/作品《画板 100 × 40》、《橋が壊れるまで》

中国の若手現代美術家で最も注目を浴びるひとり、リ・ビンユアン。濁流に小さな画板を掲げるパフォーマンス、《画板 100×40》と、石橋の上を側転する、2012年から継続しているパフォーマンス《橋が壊れるまで》。社会と個人の関係を表現した映像作品2本を提供。

応答するひと
●華雪(書家)/作品《線を引く―― 「一」を書く》(新作)
リ・ビンユアンの創作姿勢に応答し、書家の華雪さんは漢数字「一」を何度も書くという作品を作りました。「リさんの作品を見ると、彼の行為そのものが、線を引く、定められた唯一の線ではなく、まず仮の一本を引いて、確かめ、また新たな線を引くことを繰り返しながら、今、自分が置かれている〈場〉を確かめようとしているのではないかと思えてきた」(華雪《線を引く――「一」を書く》テキストより)


●磯子区障害者地域活動ホーム + 飯塚聡(映像作家)/作品《響きとこだま》(新作)
濁流に小さな画板を掲げ続けるリ・ビンユアンのパフォーマンス映像《画板 100 × 40》に、磯子区障害者地域活動ホーム(通称「いそかつ」)のメンバーがさまざまな形で応答する様子をとらえた映像作品です。

 

06.作家:杉浦篤(工房集)/作品《無題》

杉浦さんは、生活の中で、楽しそうに写真を鑑賞します。時に写真を入れた箱を抱えながら、時にベッドに並べて寝転がりながら。その毎日の行為によって、杉浦さんの大切にしている写真は、角が落ちたり、表面が削られていくのだそうです。

応答するひと
●dj sniff(音楽家)/作品《消されることで共振する記憶の手前にあるもの 杉浦篤の作品への応答》(新作)
DJとして音楽を奏でることは、大事なレコードが擦り切れていくことでもあると語るdj sniff。今回は杉浦さんの写真への応答として、ターンテーブルにカッター、紙ヤスリ、消しゴムを設置してレコードを削る、新しい音の作品を作り、テキストとともに発表します。」



アーティストプロフィール

山本 高之(やまもと たかゆき)1974年愛知県出身。小学校教諭としての経験から「教育」を中心テーマのひとつとし、子供のワークショップをベースに会話や遊びに潜む創造的な感性を通じて、普段は意識されることのない制度や慣習などの特殊性や、個人と社会の関係性を描く。近年は地域コミュニティと協働して実施するプロジェクトに多く取り組んでいる。

松本美枝子(まつもと みえこ)写真家、アーティスト。写真や映像、文章などを媒介にした作品を制作。主な展示に水戸芸術館「クリテリオム68」(06)、「茨城県北芸術祭」(16)、中房総国際芸術祭「いちはらアート×ミックス」(14)、ガーディアン・ガーデン「The Second Stage at GG #46」(17)など。著書に写真詩集『生きる』(共著:谷川俊太郎、ナナロク社)など。「水戸のキワマリ荘」のほか、「メゾン・ケンポク」を運営し、研究とプロジェクトをベースにして、地域に場を開くことを実践している。

船越雅代 (ふなこし まさよ)NYの料理学校 Institute of Culinary Education卒業。Blue Hill をはじめとするNYのレストランに勤めた後、ヨーロッパからアジアを放浪。オーストラリア船籍の客船のシェフとして大平洋を巡り、バリの老舗ホテルTandjung Sariのシェフを務め、2012年から拠点を京都に移し、国内外で、その土地を食文化、文化人類学、歴史などの視点から掘り下げ、食で表現する活動を展開する。2018年、京都にFarmoonをオープン。土祭 2018 招聘アーティスト。

川戸由紀(かわど ゆき)1984 年横浜市生まれ、横浜市在住。2003 年より横浜市港北区「アート・メープルかれん」に所属。ディズニーや子供番組のショーのキャラクター、舞台のほかにも風景や食べ物などが絵画や刺繍で表現される。それらは類似する物や構図で、連続して制作されるものが多い。紙に描いた舞台、人形を動かしながらコマ撮りして、映像作品を制作していた時期もある。

金氏徹平(かねうじ てっぺい)身のまわりの事物を素材に部分を切り抜き繋ぎ合わせることで、既存の文脈を読み替えるコラージュ的手法を用いて作品を制作。横浜美術館(2009年)、ユーレンス現代美術センター(北京2013年)、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(2016年)等で個展を開催、また、国内外の企画展・国際展で作品を発表している。2011年以降、舞台美術も複数手がけ、近年は舞台作品も制作している。

華雪 (かせつ)1975年、京都府出身。書家。92年より個展を中心に活動。文字の成り立ちを綿密にリサーチし、現代の事象との交錯を漢字一文字として表現する作品づくりに取り組むほか、〈文字を使った表現の可能性を探る〉ことを主題に、国内外でワークショップを開催する。刊行物に『ATO跡』(between the books)、『書の棲処』(赤々舎)など。作家活動の他に、『コレクション 戦争×文学』(集英社)、『石原愼太郎の文学』(文藝春秋)をはじめ書籍の題字なども多く手掛ける。

柏木麻里 (かしわぎ まり)詩人。ドイツ生まれ。第33回現代詩手帖賞受賞。近刊著書に 日英語の詩集『蝶』(思潮社)、美術書『もっと知りたいやきもの』(東京美術)がある。そのほかの詩集に『蜜の根のひびくかぎりに』、『音楽、日の』。国際芸術センター青森、森岡書店などで詩の展示・朗読を行う。2019年まで出光美術館学芸員として陶磁展覧会を企画。ストルガ国際詩祭、プリンストン・フェステイバル招待参加など国内外で活動し、詩は数カ国語に翻訳されている。

杉浦篤 (すぎうら あつし)1970年生まれ、埼玉県在住。社会福祉法人みぬま福祉会、工房集に所属。何年も触り続けることで、様々な形となったお気に入りの写真。暮らしの中でホッと一息つける夕食後や、のんびりと穏やかなひと時に、写真を入れた箱を抱え、時にはベッドに並べて寝転びながら部屋で楽しそうに写真を見ている。「Art Brut from Japan, Another Look」(Collection cle l’artbrut,2018年)、「すごいぞ、これは!」(埼玉県立近代美術館、2015年)をはじめ、展覧会参加多数。

横山裕一(よこやま ゆういち)1967年宮崎県生まれ。武蔵野美術大学で油彩を学んだが、2000年以降、時間を描くことができる表現方法として漫画を選びとり制作を始める。漫画作品に「ニュー土木」「トラベル」「NIWA」「ベビーブーム」「世界地図の間(ま)」「アイスランド」「プラザ」などがあり、その多くがフランス、アメリカ、イタリア、スペイン、ロシアなどの国で翻訳、出版されている。国内外で個展開催、グループ展参加多数。

中川美枝子(なかがわ みえこ)埼玉県生まれ。2018年、津田塾大学国際関係学科卒業。2020年、東京外国語大学大学院博士前期課程修了。専門はドイツ語文学。2017年7月より、「視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ」のスタッフとして、「見ること」を切り口にしたワークショップ活動を首都圏の美術館を中心に行っている。

dj sniff  ターンテーブル奏者、DJ、キュレーター、通訳・翻訳家。 これまでにニューヨーク、アムステルダム、香港、東京などを拠点に活動。2014年から大友良英、ユエン・チーワイとともにアジアの実験的な音楽家たちを集めるアジアン・ミーティング・フェスティバル(AMF)のコ・ディレクターを務め、音楽家としてはターンテーブルと独自の演奏ツールを組み合わせながら演奏や作品制作をする。

リ・ビンユアン(Li Binyuan)1985年中国永州生まれ。2011年中央美術学院彫刻科卒業。北京を拠点に活動。彫刻のマインドをもってパフォーマンス作品を制作、その多くを映像として発表。パフォーマンスという個人的な行為を通して、リは鑑賞者に物事を分ける境界を再考するよう促し、規制を媒介するものとしての常識に更なる疑問を投げかけている。最近の主な展覧会に「Land. Zhang Huan and Li Binyuan」(MoMA PS1、ニューヨーク、アメリカ、2018年)、「Li Binyuan」(HOW美術館、上海、中国、2019年)など。

井口直人(いぐち なおと)1971年生まれ、三重県出身。名古屋市在住。1987年から「さふらん生活園」所属。街のコンビニと施設のコピー機を使って、自分の顔とその時々の気に入ったものを写し取ることを毎日の日課としている。ガラス面に顔を押し付け自分でボタンを操作し、センサー光の動きと共に身体を動かすことで、画面に独特の歪みを作り出す。このような行為は、支援員との遊びの中で生まれ、習慣化されたものである。コンビニには15年あまり通っており、終わると店員が手際よくガラス面についた顔の脂を拭いてくれる。

磯子区障害者地域活動ホーム 様々なハンディキャップを持った人々が集まるコミュニティ。泣いたり、笑ったり、歌って踊ったり、真っ直ぐな生命力をぶつけて日々を過ごす。2020ヨコハマアートサイト事業「あいさつシリーズVol.2ぼくのあたりまえ きみのあたりまえ」at浜マーケット(2020年11月30日まで / https://y-artsite.org )企画・映像協力:飯塚聡

飯塚聡(いいつか さとし)映像作家。独立系映画製作会社勤務を経て、フリーランスのディレクターに。テレビ番組の演出を中心に幅広いジャンルの映像を制作。近年はドキュメンタリー映画の自主製作や、磯子区障害者地域活動ホームなどとの協働プロジェクトの企画・運営に取り組んでいる。バッカーズ(電撃障害者商品企画会議)の一員としても活動中。

鎌江 一美(かまえ かずみ)1966年生まれ。滋賀県在住。1985年から「やまなみ工房」に所属。思いを人に伝えるのが苦手ゆえ、コミュニケーションのツールとして振り向いて欲しい人の立体を作り続けている。モデルはすべて思いを寄せる男性。最初に題材を決め、原形を整えると、その表面全てを細かい米粒状の陶土を丹念に埋め込んでいく。完成までに大きな作品では約2か月以上を要する事もあり、無数の粒は作品全体を覆い尽くし様々な形に変化を遂げていく。大好きな人に認めてほしい。今もなお、その思いが彼女の創作に向かう全てである。

特別参加アーティスト

ジェス・トム(Jess Thom) 作家、アーティスト。自身のトゥレット症候群(チックの一種)を創造的に昇華するため、2010年にトゥレットヒーロー(Touretteshero)を共同設立。自伝的作品「Backstage in Biscuit Land」やサミュエル・ベケットの不条理演劇をもとにした「Not I」は、アンリミテッド・フェスティバルやエジンバラ・フリンジなどで上演され、高い評価を受ける。(Photo:James Lyndasy)

 



また、このコロナ禍を受けて、わたしたちは新たな鑑賞のかたちにたどり着きました。

今回の企画では、従来の展示空間ではなく、ブック(本)の形で作品を紹介いたします(横浜市庁舎で1000部無料配、遠方の方は特設サイトからダウンロードする形でもご覧いただけます)

さらに、特設サイトでは映像や音の作品を紹介するほか、ロバート キャンベルさんや篠原ともえさんが目が見えない人や聞こえない人と 対話しながら作品を鑑賞するバリアフリーの映像コンテンツがお楽しみいただけます。

そちらにもぜひご注目ください。

  • 読む展覧会「BOOK PROJECT そのうち届くラブレター」概要

[会期]11月18日(水)〜24日(火)
[BOOK PROJECT 特設サイトURL]https://bookproject.paratriennale.net/
[鑑賞方法]
1)ブック:会期中、横浜市庁舎でブック(1000部)無料配布。同日より特設サイトからも無料ダウンロード可能。
2)特設サイト:会期中は映像、音声作品と、情報保障のための動画を公開。また、イギリス人作家ジェス・トムのドキュメンタリー映画 《Me, My Mouth and I》 も日本語字幕つきで公開します。
3)横浜市庁舎:ブックを無料配布するほか、山本高之、鎌江一美、杉浦篤、川戸由紀、華雪の作品展示を行います。*ステージを使用した特別イベントも開催予定!詳細は11月発表予定。

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